マックス・U-18大賞
マックス・U-18大賞 < 高校生の部 >
電車さん(静岡県 / 17歳)
「いってらっしゃい」
私が毎日利用しているバスの運転手さんが降りるときにかならずいってくれる言葉だ。本当に、本当になにげない言葉なのだけれど、いつも元気がもらえた。しかし、毎日この言葉をきいていると、いつしかそのままその言葉を聞き流してしまうことが増えた。当たり前のことだと慣れてしまっていたのだ。
ある日、バスが二十分も遅れて到着したことがあった。そのとき私はバスの遅れたいらだちから、怒ったようにしてバスをとびだしてしまった。この日は何事も全くうまくいかなかった。
次の日バスを降りるときに、「昨日はごめんな。」と運転手さんが言ってくれた。
そのとき、私は思い出した。私がどんなときでも優しく「いってらっしゃい」と声をかけてくれていたことを。それを一回遅れたくらいで感謝の気持ちを忘れてしまっていた自分がとても恥ずかしく思えた。
だから私は「いつもありがとうございます。」と笑って答えた。
私は今もそのバスを利用しているが運転手さんの「いってらっしゃい」は今もぼくの心の支えになっている。
マックス・U-18大賞 < 中学生の部 >
めがねじいさん(東京都 / 15歳)
「ただいま。」
僕は毎日必ず大きな声で明るく言う。どんなに嫌なこと、悲しいことがあっても僕はそう決めている。
僕の家には認知症の祖母がいる。日に日にその症状は悪化し、もう僕の知っている祖母ではなくなりつつある。そんな祖母を介護している母は見ていてとても大変そうである。
ある日、いつも疲れている母に、
「一番の楽しみは何?」
と聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。
「子供たちの元気な『ただいま』の声を聞くことだよ。」
初め、そんなことかと思った。よくよく聞いてみると、無事に家に帰ってきた子供たちの明るく大きな「ただいま」を聞くことが何よりの幸せで、楽しみなんだそうだ。
それは高価なものをあげるより大切なこと。
小さな母へのプレゼント。僕はこれからも元気に「ただいま」を言い続けようと思う。
マックス・U-18大賞 < 小学生以下の部 >
さくらさん(三重県 / 9歳)
夏のはじめのある朝、一本の電話がかかった。内ようを私は信じることができなかった。
ママが、つぶやいた。
「おじいちゃんが、がんの容体が悪くなって病院に入院したそうよ。それで、大分県に来てって、おばあちゃんが言ってたのよ。」
大変な事になってしまったから朝早くの電車ですぐさま大分県に行くことになった。病院に着いた。病室に入って小さな声でしゃべっているのに、おじいちゃんが、「小さな声でしゃべって。」と、言う。よほどきついんだろうと思った。
しかし、その夜びっくりするほど元気になってうれしいおじいちゃんは、「こんなに元気だったらたいいん出来ると思う。」と元気そうにいっていたので安心した。
けれど、そんな幸せな時もすぐ終わって次の日の朝に死んでしまった。病院に着いた時は死んでしまっていた。みんなが泣いている中で私だけ泣かなかった。こんな事がはじめてだったからどうすればいいか分からなかったからだ。でも、いつか目からなみだがあふれでて来た。
その日の夜、きれいな星空が出た。私は強く思った。
「おじいちゃんにもみせたかったなぁ。多分、今日の星がきれいなのはおじいちゃんが天国で、泣かないでって言っているんだ。」だけど、また泣いてしまった。
私は言いたかった。おじいちゃんに向かって「ごめんね。」と。
ごめんねって言いたいわけは、おじいちゃんが死ぬ前の日に「バイバイ。」と言ってわかれたから、次の日おじいちゃんに会えないままおじいちゃんは死んじゃっていたからだ。
だけど、ママはその時に言った。
「おじいちゃんとはまだバイバイじゃないよ。天国から見守っていてくれるよ。」
となぐさめてくれた。だからこうして今、わらいながら生活出来ているんだな、と心で思った。