※食品工場内のイメージです。
もともと食品会社では、卵のパックやお弁当の蓋などを金属針でとめていました。しかし、十数年前から、安全のために金属針が使われなくなってきており、ここ数年では生産ラインばかりでなく事務所でも使用できないようになってきました。
実際、当社社員がある食品工場を訪問した際に、「ホッチキスでとじた書類は出さないでほしい」と要望されたことも。そのような厳しい環境でも、食品会社では他の企業と同様に資料作成の機会があり、また、工程間をまたいで書類が行き来する場面があり、食品工場の現場からは「多い枚数でもしっかりととじたい」という声が聞かれました。
全国の食品会社で働く人たちにも満足していただける商品を…という思いから開発がはじまりました。
開発中に作られた試作機の一部
そこで私たちが着目したのが紙製の針。
ただ、当時の食品会社では、今ほど脱・金属針の動きが大きくなかったため、社内でも「金属針の否定につながるのでは」との声も聞かれました。
しかし、最終的には営業担当者が現場で掴んできたお客様の声を信じ、2006年、開発が本格的に動き出しました。
通常のホッチキスが完成まで1年程度かかるのに対し、P-KISSは7年も要した理由。
それは、「どうやってしっかりとじるか」と「紙の素材をどうするか」という2つの難関が立ちはだかったことが原因でした。
↑現行の“とじる仕組み”が完成した
三代目試作機。
↑試しとじをした紙の束。
数多くのテストがされ商品化されました。
金属針のように強度のない“紙の針”をどうやって書類に通すか…さまざまなアイデアが浮かんでは消えていきました。そして、開発から1年。“とじる仕組み”がおぼろけながら見えてきました。
突破口となった“とじる仕組み”は、カッターで書類に切り込みを入れながら紙針も同時に書類に貫通させ、カッターを戻しながら紙針の両端を折り曲げてしっかりと接着させるなど、約20アクション。
これらをタイミングよく作動させないと上手くとじることができず、地道に一つずつクリアしていきました。
また、紙針の素材選びにも難航。最終的には、雑誌の表紙と同じコート紙を採用。色にも現場の声を取り入れ、食品工場で識別しやすい“青”と書類になじむ“白”を採用しました。
幾多の困難を乗り越え発売に至ったP-KISSは、今では食品会社のみならず、さまざまな場面で使用されています。例えば、幼稚園では、子どもが被るお面を作る際に、「顔を傷つける心配が少なくて安心」との声や、地方自治体では、「高齢者に配布する資料をとじるために使いたい」という理由で採用されています。
今後もお客様の声を一つひとつ
分析し、より多くの方が満足で
きるホッチキスの開発を進めて
いきます。